「コンテンツ・レーティング」による群衆の叡智

アマゾン(Amazon.com)で買い物をされた方は経験があるだろうが、ユーザーが商品の内容、質、使い勝手に関して5段階の評価(5つ星)を書いている。アマゾンの場合には、個々のユーザー評価がそれぞれ掲載されている「評判(Reputation)メカニズム」を組み込んだサービスである。

このようなユーザーからの評価をより多くの大衆に求め、結果を総合して「群衆の叡智」を示すのが、「コンテンツ・レーティング(content rating)」又は「投票(Vote)システム」と呼ばれるものである。これも大衆を利用しているという意味で、「クラウドソーシング」の一種である。

「コンテンツ・レーティング」の分かりやすい例として、「ホット・オア・ノット(Hot or Not)」というサイトがある。 ウィジェットとしての利用も人気上昇中だ。男性、女性の写真(性別、年齢帯で絞り込み可能)がクリックする度に次から次へと現れ、その人を「Hot!(格好いい、イケテル)」と思うかどうかを10段階のレーティングで評価する。その結果、その人の総合評価が10段階で表示される。ただそれだけだ。気に入った人の写真があれば、リンクを貼り共有することもできる。「ホット・オア・ノット」のインターフェイスをより洗練して同様のサービスを提供している「マッカブル(mackable.com)」というサイトもある。

「コンテンツ・レーティング」は、ユーザーが楽しんでレーティングするものであり、通常は見返りを要求するものではないが、ユーザーにインセンティブを与える工夫をしているサービスもある。ヘリウム(Helium)は、まず、ポップカルチャーでも政治問題でも何でもいいので、ユーザーが自分の意見をアップする。すると、自分の意見と、他のユーザーによる意見が比較対立する形でヘリウムのサイトにアップされる。その他の何百万というユーザーが、どちらの意見に同調するかを投票する。投票が活発な論争(ディベート)ほど、ヘリウムのサイトの中で上位に表示される。投票数を多く獲得した意見を書いたユーザーには、ヘリウムが広告料で稼いだ利益の一部の分配を受けることができる。経済的なインセンティブがあるので、ユーザーは自分の意見に磨きをかけ、ますますヘリウムでのディベートは面白くなる。まさに、ディベート好きな米国ならではのサービスである。

レーティングや評価内容を他のユーザーと共有することで、ユーザー間でのソーシャルな関係を構築するプラットフォーム・サービスも登場している。「レイト・イット・オール(RateItAll)」は、ガジェット、ブログ、セレブ(有名人)、政策、旅行、スポーツ、地域情報などの評価をウェブ又はウィジェット上で他のユーザーと共有することができる。

「フリー」のところで紹介した「ディグ(Digg)」も「投票システム」が基本にある。気に入ったニュースやブログのエントリーがあったら、それをブックマークする感覚で「ディグ(掘り起こす)」する。つまらなかったら葬る(Bury)。一ユーザーが「ディグ」したら、1票投じたことになる。投票結果の多い記事やエントリーが「ディグ」のトップページの上位に表示される。「ディグ」のフィードをRSSリーダーに登録しておけば、世の中の関心事項は直ぐに把握できてしまう。「ディグ・ラボ(Digg Lab)」では、大衆が「ディグ」しているリアルタイムの様子を、ビジュアルに表示する面白いインターフェイスを公開している。中でもビッグ・スパイ(Big Spy)では、画面の上から、皆が「ディグ」している記事のヘッドラインがどんどん落ちてきて、「ディグ」している数が多い記事ほど、そのヘッドラインが大きなフォントで表示される。

グーグルは、ページランクと呼ばれる手法で、リンクされたページの質と量、リンクしたページの内容などを数値化し、膨大な行列計算をしたうえで、検索結果を表示している。グーグルは極めて技術指向性の強い会社なので、人間を介さずにユーザーが求める情報をランク付けして表示する。一方、ディグは、多数の人間の投票行動によって、情報をランク付けして表示するのである。今や、インターネット上のランク付けのノウハウは、企業のビジネスを左右する大きな問題にまでなっている。

ディグは、テクノロジー系のニュースを最初に取り扱ってきたので、ディグのユーザーも必然的に新しい技術好きのギークが多かった。そういう意味では、ユーザーのバックグラウンドや嗜好性にある種の共通点が見られるので、群衆の叡智がうまく働いた面があるだろう。

実際に、ディグのアデルソンCEOと面談した際に彼が示した興味深いグラフでは、2006年7月までは、技術系のコンテンツが他の一般のコンテンツ(例えば、イラク戦争のニュース)よりも多くディグされていたが、その後両者が拮抗し、2006年10月からは非テクノロジー系のコンテンツの方が主流となっている。

取り扱う情報の範囲が広がれば、ユーザーの範囲も広がる。ユーザーの範囲が広がれば、ますますディグする情報の範囲が広がる。まさに、ディグのユーザーは群衆となっていくだろう。でも、その場合、群衆の叡智のクオリティーは維持できるだろうか。一般的なコンテンツになるほど、流行や感覚に左右される可能性は高い。群衆の叡智ではなく、単なる群衆心理を表したサイトになってしまうのか、それとも群衆の叡智がページランクを凌駕するのか。

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