「テイスト・シェアリング」で音楽生活を豊かに

誰しも、同じ音楽テイストを持つ友達から自分の知らない音楽を紹介された経験があるだろう。潤沢なITインフラを用いて、会ったこともない世界中の音楽ファン達と好きな音楽やアーティストの情報などを共有して楽しむのが「テイスト・シェアリング(Taste Sharing)」である。

2007年5月、米大手メディアCBSが2億8千万ドルで買収すると発表したイギリスの人気音楽サイトであるラスト・エフエム(Last.fm)は、 「テイスト・シェアリング」サービスの代表格である。ちなみに、CBSは、動画ブログサービスのウォールストリップ(Wallstrip.com)を買収したり、次世代インターネットTVのジュースト(Joost)に出資したりと、インタラクティブ・メディアとしてのウェブ系サービスに力を入れている。

ラスト・エフエムは、200カ国以上に1500万人以上のユーザーを持つ。ユーザーの音楽の嗜好を分析し、膨大な数の他のユーザーの嗜好データの分析結果を利用して、ユーザーのテイストに合った音楽を推薦したり、ユーザーに合ったストリーミング・ラジオを提供したりする。また、同じ音楽テイストを持つユーザーどうしを繋ぐソーシャルネットワーキングサービス(SNS)としての機能もある。性別、年齢別、居住国、プロフィールや音楽テイストから自分の嗜好と合う友達を検索したり、お気に入りのアーティストのライブの情報を共有して友達を誘ったりすることもできる。

「テイスト・シェアリング」するためにユーザーに面倒な負担をかけてはならない。面倒な操作を要求するとユーザーはすぐに逃げてしまう。ラスト・エフエムの場合には、最初にGPL(ジェネラル・パブリック・ライセンス)のオープンソース・ソフトウェアをダウンロードするだけだ。ダウンロードしてからは、「テイスト・シェアリング」していることをユーザーに感じさせない。例えば、私がアイ・チューンズで音楽を聞けば、そのトラック情報がラスト・エフエムのサーバーに送られる(ラスト・エフエムでは、この処理をスクロブル(Scrobble)と呼んでいる)。ラスト・エフエムは、そのサービスを支える中核的エンジン(オーディオ・スクロブラー・ミュージック・エンジン(Audioscrobbler music engine))を持ち、毎日ユーザーが1000万回以上スクロブルするデータを処理している。ユーザーが音楽を聴けば聴くほどラスト・エフエムの音楽プラットフォームは巨大化し、完成度を高めて行く。皆がインターネットを使い込めば使い込むほど、ページランクを基盤とするグーグルの検索エンジンが賢くなるのと何か似ている。

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