アマゾンは本屋を超えたウェブサービス企業だ

ウェブ上のサービスとして提供されるのは、出来合いのソフトウェアだけではない。セールスフォス・ドットコムは、2007年8月に「プラットフォーム・アズ・ア・サービス(Platform as a Service: PaaS)」という概念を発表した。これは、同社のオンデマンド・プラットフォーム向けの開発言語であるエイペックス・コード(Apex Code)を利用して、開発者にカスタマイズ環境を提供するという意味で用いられている。つまり、出来合いのソフトウェアを提供するSaaSを超えて、ソフトウェアの開発、導入、統合、設計、保存及び実行環境を提供するという意味でPaaSと呼んでいるものだ。

ソフトウェアだけでなく、ストレージ・キャパシティ(記憶装置容量)、コンピューテングパワー(計算能力)やセキュリティ環境もウェブ上のサービスとして提供できる時代になっている。アマゾンが提供するアマゾン・ウェブサービス(Amazon Web Service)がその好例だ。多くの人は、アマゾンは書籍のショッピング・サイトと思っているが、そうではない。グーグルと同様に非常に技術指向の強い会社であり、自社が提供するサービス向けに必要なサービスを社内で開発し、その成果を外販している。

アマゾン・ウェブサービスの代表格は、通常S3と呼ばれるアマゾン・シンプル・ストレージ・サービス(Amazon Simple Storage Service: Amazon S3)である。アマゾンS3は、世界中のどこからでもウェブベースでアクセス可能なストレージサービスを提供するものであり、スケーラビリティ(拡張性)、信頼性、スピード、安価な料金体系を売り文句にしている。また、アマゾンは、S3のコンピューティング(計算能力)版とも言えるウェブサービスもベータ版で提供している。通常EC2と呼ばれるこのウェブサービスは、アマゾン・イラスティック・コンピュート・クラウド(Amazon Elastic Compute Cloud: Amazon EC2)の略である。

このようなアマゾンのウェブサービスを利用する立場に立てば、大規模なサーバーの用意やデータセンターの構築を一から行う必要はなく、必要な時期に必要な規模のストレージやコンピューティング能力をアマゾンのウェブサービスとして買うことができるので、自社製品を市場に投入するまでの時間(Time to market)を大幅に短縮することが可能になる。また、最も重要なことは、自分でやらなくても済むことはアマゾンのウェブサービスに任せて、ユーザーは自分がもっているイノベーティブな仕事に注力できるし、限られた予算をコア技術に投入することが可能になる。実際、グーグルの対抗馬として有望視されている自然言語による検索エンジンを開発しているパワーセット(Powerset)は、アマゾンEC2を利用することで、全ての投資を優秀な人材に投入することができている。このようなウェブサービスの登場が、投資能力が限られた米国の新興IT企業の成長を支えている面もあると言えよう。

さらに、アマゾンは、ウェブサービス・ビジネスのターゲットをコンシューマーにも広げてきた。2007年8月に同社は、アマゾン・フレキシブル・ペイメント・サービス(Amazon Flexible Payment Service: Amazon FPS)を限定的ベータ版として特定の開発者向けに発表した。これは、アマゾン以外のショッピング・サイトの決済にアマゾンの決済サービスが使えるというものであり、アマゾンのアカウントを持っているユーザーならば、再度、個人情報などを入力しなくても買い物が可能になる。アマゾンは取引毎にわずかな手数料を得るビジネスモデルになっており、今後、アマゾンFPSを組み込むウェブサイトが増えるに従って、知らないうちにアマゾンFPSで決済するコンシューマーが増加し、アマゾンは相当の利益を得るものと見込まれる。

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