Web Office Suiteにマイクロソフトはどう対応するのか

ウェブOSは、まだ本格的な勢力とは言えないが、その革新的な取り組みは、マイクロソフトにとっては潜在的な脅威だろう。同社はMSNやXboxなどにも取り組んではいるが、以前として同社の利益の大半はウィンドウズとマイクロソフト・オフィスで稼ぎだしているのだ。そして、そのオフィス製品にも「ウェブ・オリエンテッド」のトレンドが吹き荒れつつある。

グーグルは、2006年3月にオンライン・ワードプロセッサ(文書作成)のライトリー(Writely)を買収して得た技術を、別途自社開発していたオンライン・スプレッドシート(表計算)と統合して、グーグル・ドックス・アンド・スプレッドシート(Google Docs & Spreadsheets)という名で提供している。無料のグーグル・アカウントを作成すれば、誰でもオンライン上で文書作成と表計算サービスが無料で利用できる。他のグーグル・アカウントを持っているユーザーと共同で編集作業することも可能だ。サービスがリリースされた当初は、日本語の文字化けやPDF印刷に不具合もあったが、今では私も問題なく使用している。グーグルのウェブメールであるGメール(Gmail)の利用者であれば、受信したメールにマイクロソフト・ワードの文書が添付されていれば、それをグーグル・ドックス・アンド・スプレッドシートで開き、その後も文書管理することも可能だ。

そして、グーグルは、2007年4月にプレゼンテーション作成ツールを手がけるトニック・システムズ(Tonic Systems)を、同年6月にオンライン・プレゼンテーションの技術を有するゼンター(Zenter)を買収した。これで、マイクロソフト・オフィスの全製品に相当するウェブ・オフィス・スイート(Web Office Suite)を提供する用意が出来た訳だ。

このようなウェブ・オフィス・スイートは、グーグル以外の新興企業も取り組んでおり、ウェブOS同様に乱戦気味である。グーグル以上に品揃えを持つのは、米アドベントネット(AdventNet)が提供するゾホ(Zoho)シリーズである。マイクロソフト・オフィスと同様に、文書作成(Zoho Writer)、表計算(Zoho Sheet)、プレゼンテーション(Zoho Show)をオンライン上で無料提供するだけでなく、メール(Zoho Mail)、スケジュール(Zoho Planner)、チャット(Zoho Chat) 、ウィキ(Zoho Wiki)、ノート(Zoho NoteBook)、プロジェクト管理(Zoho Project)、顧客管理(Zoho CRM)、データベース構築(Zoho Creator)、オンライン会議(Zoho Meeting)など、文字通りオフィスで必要な機能を無償で提供している。同社は、ITオペレーション、セキュリティ、データベース技術などを全世界8000社以上に提供している企業であり、今後エンタープライズ系のユーザー層を広げるポテンシャルを持っていると思われる。

続いて、米サンノゼのシンクフリー(ThinkFree)も、文書作成(ThinkFree Write)、表計算(ThinkFree Calc)、プレゼンテーション(ThinkFree Show)をオンライン版のサービスとして無料提供している。同社は、オンライン版のみならず、デスクトップ版、iPodでの閲覧を可能にするポータブル版も有償でリリースしている。シンクフリーのユーザー数は、2007年8月現在33.5万人であり、わずかながらゾホのユーザー数を上回っていると言われている。

これらの他にも、同じくシリコンバレーにあるジンブラ(Zimbra)は、ジンブラ・コラボレーション・スイート(Zimbra Collaboration Suite)の中で、Ajax(Asynchronous JavaScript+XML)ベースの文書作成や表計算のオンライン・サービスを提供している。

このように、グーグルに加えて、新興企業がウェブ・オフィス・スイート分野に参入している中で、マイクロソフトは何をしているのか。ビル・ゲイツの後を次いでチーフ・ソフトウェア・アーキテクトになっているレイ・オジーが陣頭指揮をとったとされるウィンドウズ・オフィス・ライブでは、中小企業での製品管理や顧客管理のための共同作業ツールをいくつか提供しているが、肝心のマイクロソフト・オフィスに代替するオンライン・サービスは提供していない。それは、仮に、オンライン・サービスを提供してしまえば、既存のオフィス製品が同社にもたらしている莫大な利益を損なうことになってしまうからであろう。同社は、ソフトウェアが全てサービスに置き換われることを意味するソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)という言葉を否定し、これからは、ソフトウェアとサービスが共存するソフトウェア・プラス・サービスの時代だと主張している。しかし、マイクロソフトのウェブ・オフィス・スイートへの対応を見ていると、「ウェブ・オリエンテッド」な破壊的テクノロジーが登場したことで、社内でジレンマが発生しているようにしか見えないのは私だけだろうか。

広告

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。