新しい経済的なつながりを提供する仮想世界

セカンドライフは、仮想世界と現実世界に新たな形のつながりを作った。リンデン・ラボは、セカンドライフ内の仮想通貨リンデン・ドル(Linden Dollar)と米ドルとを交換できる変動為替相場制の市場「リンデックス(LindeX)」を公式にセカンドライフの中に組み込んだのだ。つまり、RMTを仮想世界のアウトサイダーに任せず、むしろセカンドライフの中に取り込み、その為替手数料をリンデン・ラボの収入とすることに目をつけた。実際の仕組みとしては、ユーザーは、リンデン・ドルを購入する前に、クレジット・カードかペイパル(PayPal)自分のアカウントに米ドルのクレジットを作り、その米ドルの金額を上限としてリンデン・ドルの買い注文を出せば、リンデックス市場を通じてリンデン・ドルを売ろうとする住人との間で取引が成立する仕組みだ。

セカンドライフの他にも、仮想世界と現実世界をユニークな形で経済的につなげるサービスがある。スウェーデンのソフトウェア企業であるマインドアーク(MindArk)が提供する「エントロピア・ユニバース(Entropia Universe)」は、新たな惑星を開拓することを目的に、モンスターとの戦闘のほか、土地の所有や作成した商品の販売が行えるという、MMORPGの要素にセカンドライフ的な要素を加えたものである。マインドアークでは、仮想通貨「PED」と米ドルとの間で固定相場制(10PED=1米ドル)の通貨交換を公式サービスとして採用している。そして、マインドアーク内で貯まったPEDを世界中のATM(現金自動入金・自動支払機)から現金通貨で引き出せるデビッド・カード「エントロピア・ユニバース・キャッシュ・カード(Entropia Universe Cash Card)」も発行しているのだ。

また、2007年3月からは「ワールド・オブ・ウォークラフト(WoW)」を運営する米ブリザード・エンターテインメント、クレジット・カード運営元会社のVISA USA、ネブラスカ州の銀行ファースト・ナショナル・バンク・オブ・オマハとが提携して、「ワールド・オブ・ウォークラフト・リワードVISAカード(World of Warcraft REWARDS VISA CARD)」というクレジット・カードの発行が始まった。このクレジット・カードを使って現実の世界で買い物をすると、購入金額の1%相当額分だけWoWのプレイ時間を獲得できる仕組みになっている。

日本では、クレジット・カードやデビッド・カードより、「SUICA」や「Edy」などのICカード型電子マネーや、航空会社や家電量販店などのポイントカードの流通の方が盛んである。日本で今後登場する仮想世界の中には、これらの新しい「お金」を通して、現実世界とのつながりを持たせるサービスが登場するかもしれない。

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